裏側から見る、ロングステイ希望国No1のマレーシア

「ロングステイ希望国の第1位はマレーシア」。マレーシアを紹介される際によく使われるキャッチコピーだ。2016年4月に発表されたロングステイ財団調べ『ロングステイ希望国2015』でも1位となり、10年連続でマレーシアがトップとなった。10年もの間、連続して同じ国が選出されるとは、どのような調査なのだろうか。

ls_ranking ロングステイ財団調べ『ロングステイ希望国2015』

イベント参加者を対象としたアンケート

『ロングステイ希望国2015』の調査方法は2015年3月~12月までにロングステイ財団が主催や後援したイベント、計155本、4,880名(有効回答数:2,054)の参加者を対象としたアンケート「ロングステイに関する意識調査」の回答をもとにしているとある。

マレーシアを紹介するイベントが圧倒的多数

ロングステイ財団が発表している平成26年度事業報告書によると、ロングステイ財団が関係している主要イベントは次の通りだった。

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ご覧のとおり、マレーシアへのロングステイを紹介するイベントが圧倒的に多いのだ。特定の国にしばられない「全般」を除くと、イベントの69%はマレーシアでのロングステイ先として紹介している。

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さらにロングステイ財団が後援したイベントも状況を調べてみる。ロングステイ財団が発表しているイベント情報のうち調査対象となった2015年3月~12月に開催されたイベントを抽出して、イベントで紹介された国をまとめたのが下のグラフ。ロングステイ財団は「ロングステイアドバイザー」という制度を設けているが、このロングステイアドバイザーが開催するイベントを見ても、圧倒的にマレーシアでのロングステイを紹介することが多いのだ。

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マレーシアがロングステイ希望国1位に選ばれるワケ

もうお分かりいただけただろう。『ロングステイ希望国』の調査が、そもそもマレーシアのロングステイを紹介するイベントで行われていることが多いのだ。マレーシアに関心があってイベントに参加するわけだから、当然『ロングステイ希望国』にマレーシアを選ぶアンケート回答が多くなる。有効回答数2,054件がどのイベントで取られたアンケートなのか公表されていないので確認できないが、回答数はもっとマレーシアのイベントに偏っている可能性すらある。調査結果はマレーシアへのロングステイを推進するロングステイ財団や斡旋業者の意向が反映された結果ともいえるだろう。

マレーシアの「10年連続第1位」は必然だった?

マレーシア政府やマレーシア観光局としては、日本からマレーシアへの旅行者、移住者、投資を呼び込み外貨を稼ぎたい思惑がある。MM2H(マレーシア マイセカンドホーム)という長期滞在用ビザを発行するのもそのためだ。

ロングステイ財団は多くの人々がマレーシアでのロングステイを行うことで財団としての目的を果たし、存在価値を高めることができる。

斡旋業者はビジネスが主目的なので、多くの人々がマレーシアでロングステイを行えばビザ取得、住居の仲介、学校の手配など多くの関連ビジネスを行うことができる。

つまり、マレーシアでのロングステイにかかわるマレーシア政府、財団、斡旋業者は利害が一致している。9年連続で1位となったマレーシアの関係者が”10年連続”という華々しいキャッチコピーをみすみす逃すようなことをするだろうか。

LongstayRelation

「良い面」に偏った情報にご注意を

実際にマレーシアに移住した筆者は温暖な気候、日本との時差が1時間で距離も近い、地震や台風などの天災が少ない、多様な文化、親日的な国民性などマレーシアでの生活の良さを体感しているところでもある。ロングステイ希望国1位だと言われると素直に受け入れたくなる気持ちもある。

しかし、ロングステイを紹介する上記のようなイベントでは、「ロングステイ希望国10年連続1位」というキャッチコピーのもと、マレーシアのロングステイの良い面を強調して紹介されているのではないだろうかと心配になる。「物価が1/3」というフレーズも現在では一部のローカル向けの商品やサービスを取り上げただけの偏った情報といわざるを得ない。

マレーシアは「比較的安全」とよく紹介されていて、確かに他の東南アジアの国と比べると安全かもしれないが、日本と同じように安全なのかと思って渡航してしまうと、マレーシアでの殺人事件発生率は日本の約2倍、強盗の発生率は日本の23倍ということをマレーシアで生活を始めてから知ることになる。

マレーシアのプラス面に偏った情報だけを持つことがないように、犯罪、交通事故、デング熱の発症、ヘイズによる健康被害、テロの危険性などマイナス面についても利害関係のないセカンドオピニオンや外務省 海外安全ホームページのようなサイトからの情報を得たり、自ら裏付けを確認するなどしてバランスをとるように心がけておきたい。

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Issued by 「マレーシア ソーシャルナビ 2016」

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