成長するマレーシアの医療ビジネス

この2日間で長男に続き次男も発熱があり、クリニックと総合病院を2回も往復した。マレーシアでは一般的な軽い症状(頭痛、発熱、皮膚疾患など)を診る一般医(General Practitioner)と、より高度な専門分野を診る専門医(Specialist Doctor)と呼ばれる医者に分かれている。

大体どの地域にも近所の小さなクリニック(マレーシアではKLINIKと書く)には一般医がいて、通常24時間オープンしていて便利だ。今回も予約なしでクリニックを訪れて、5分ほどの待ち時間で診てもらえた。診察を受けて、薬も同じクリニック内ですぐに出してもらえるので、順番待ちのストレスを感じることはない。料金も安く、今回の発熱の診療では診察料20リンギ(約660円)、薬代35リンギ(1,155円)だった。ただし、マレーシアでは日本のような国民皆保険制度はないので、別途民間の保険に加入していない限り、支払いは全額実費(現金またはカード払い)となる。

KLINIK

今回利用したクリニック

病院の主な運営形態
マレーシアには政府系の公立病院と民間企業が運営する私立病院があり、公立病院ではほぼ無料で治療が受けられるが、いつも混雑していて設備も古いものが多いので、通常、日本人を含めて外国人が公立病院に行くことはない。一方、私立病院は民間企業がビジネスとして経営しているので、すべて有料となるがサービスレベルが高く、特に総合病院は病棟も立派で最新の医療機器を揃えている。

マレーシアの病院

長男も次男もクリニックで処方された薬では回復しているように見えなかったため、総合病院に連れていくと診断結果はインフルエンザA型だった。総合病院では診療を受けてインフルエンザ テストを行い、タミフルを処方されて455リンギ(約15,000円)。クリニックと比較して格段に高価だが薬の内容が違うので治りが早い。軽い病気はクリニックで、重症化したら総合病院に行くという人もいれば、最初から総合病院に行って早く治すという人もいる。

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今回利用した総合病院 / ホテルのような病棟と受付前のロビーの様子

医療ビジネスは成長産業
マレーシアの医療は日本と比較しても見劣りしない高い水準だと言われている。それはまず有料でも高度な医療サービスを受けたいという患者のニーズがあるため、クリニックや総合病院を経営する民間企業が参入し、そこに欧米の大学で勉強して最新の医療を学んだ医師が勤務することで、ますます医療水準を上げることに成功している。医療産業はビジネスとして定着しているし、むしろ成長産業とみなされている。アジア各国や中東諸国の富裕層にマレーシアで高度医療を受けてもらう「メディカル ツーリズム」はマレーシアのツーリズム施策でも注力されている分野だ

CTScanner

日本からも増えるメディカル ツーリスト
マレーシアは、2009年7月に保健省(MOH) 傘下にメディカルツーリズムを専門に管轄する組織「MMTC(The Malaysia Healthcare Travel Council)を設立。メディカルツーリズム専用サイト を開設し、マレーシア全体で展開するツーリズム戦略と連動しながらプロモーション活動を行っている。クアラルンプール国際空港や大型ショッピングモールなどではメディカルツーリズムの広告を目にすることができる。

政府が今後ますますこのメディカルツーリズムの利用者増を期待しているのが日本や中国の裕福な定年退職者だ。一年中温暖な気候で日本人にとっても生活しやすい環境、そして高度な医療環境を積極的にアピールしている。その成果もあり、マレーシアでロングステイができるマレーシア・マイ・セカンドホーム(MM2H)の日本人による取得者数は2013年にバングラデシュを抜いて、2位に浮上した。

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マレーシア・マイ・セカンドホーム(MM2H)国別の取得者

各総合病院では日本人医師や日本語を話せる医師も多く在籍しているので、言葉やメンタル的な不安も解消できる環境が整ってきている。今後、日本では高齢者が急増することによって病床の不足や医療関係者の人材不足が心配されているが、国内だけではなく「メディカルツーリズム」を掲げるマレーシアやシンガポール、タイといった海外での生活に目を向けてみるのも、その解決の1つの道になることだろう。

Issued by 「マレーシア ソーシャルナビ 2014」

コメント

  1. TK より:

    いつも拝見しております。 素晴らしい内容です。
    マレーシアのビジネス状況を分かりやすく解説してますね。

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