円安で異変、マレーシアでの年金生活

日銀による追加緩和第二弾(黒田バズーカ2)の威力は大きく、対ドル相場だけではなく、円は世界各国の通貨との交換レートを下げている。マレーシア リンギットも例外ではなく、今回の追加金融緩和の告知とともに円安が進行し、1リンギットあたり35円まで上昇した。つい最近までマレーシアで買い物をするときにはリンギットの値札を見て、30倍すれば大体の円換算での値ごろ感がわかったのだが、これからは35倍しないとならない。同じものを買うにしても何となく割高感がでてくる。

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日本円の対リンギ 為替チャート

3年前からマレーシアで生活している方は、もっと割高感を感じていることだろう。3年前はリンギットの値札を見て、おおよそ25倍すればよかったからだ。その頃、1000円をマレーシアリンギットに両替すると約40リンギットになったのだが、現在では29リンギットにしかならない。過去3年間でみると円はリンギットに対して約27%も下落している

実質的な年金支給額は大幅に目減り
定年退職後にマレーシア・マイ・セカンドホーム(MM2H)を取得して、マレーシアで豊かな年金生活を楽しんでいるご夫婦も多いが、急激な円安が進む中で年金だけでの生活は成り立つのだろうか? Nenkin

厚生労働相が発表している平成26年度の年金額の例によると、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額(月額)は226,925円。3年前の2011年度の年金額からはマイナス2%だが、先ほどの為替レートの通り、この年金を円からマレーシアリンギに換金すると3年前なら9,266リンギットになったが現在では円安により6,580リンギットまで目減りする。円建ての年金給付をもとにマレーシアで年金生活する方にとっては、最近の2%の年金減と円安によって実質収入が29%も減少していることになる。

年金だけで生活できるのか?
マレーシアで年金生活できるかどうかは個人の生活スタイルに大きく依存するところとなるが、仮に先ほどの月額6,580リンギット以下で夫婦で生活する場合どのような世帯支出になるのか、レジャー費を削らない前提でモデルケースを作ってみた。日本からマレーシアに移住する費用や日本で必要となる費用、また日本への帰国費用など一時的な出費は含んでいないが、現在の為替レートでも年金だけで生活できないことはない。
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マレーシアの平均世帯収入と急接近
現状で生活できるからと言ってこのままでもよいとは限らない。以下のグラフにて、先ほどの日本人の平均年金受給額とマレーシアの平均世帯収入をリンギット建てで比較した。2009年~2012年では平均的なマレーシアの世帯よりも1.7倍~2倍もの年金受給を得られていたが、2013年には1.2倍差になり、さらに2014年にはほぼ同水準になっているとみられる。なおクアラルンプール市内では2012年の時点で平均世帯収入が8,586リンギットだったので、クアラルンプールではすでに平均年金給付額は平均世帯収入よりも大幅に下回っているといえる。

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日本人の平均年金受給額

ますます目減りするリスクも
今後、給付額が増えることのない年金額はマレーシアでの平均世帯収入に追い抜かれることは間違いない。日銀の金融緩和第二弾はまだ始まったばかりなので、一層の円安によって実質的な年金の給付額がさらに目減りしていくことが想定されるし、近年のマレーシアでは2%以上の年平均インフレ率なので、今後も物価上昇が続くことも十分想定できる。年々、物価が上昇していることは現地生活でも体感できるくらいの変化になっている。

どのような円安対策が可能か
それではどのような対策が可能なのか。年金支給額が変わらない以上打つ手は限られるが、円建ての余裕資産を持っているのであれば、さらなる円安時に利益を得られる対象に投資しておくことで為替リスクを軽減することができるだろう。

1.リンギットに換金する
さらなる円安が進むと今のマレーシア生活に支障がでる(あるいは移住ができない)のであれば、そのリスクを回避するため今のうちにリンギットに換金しておくべきだろう。すでに円安になってしまってからの換金には躊躇してしまいがちだが、さらなる円安が進行してしまってからではそれこそ対策の打ちようがなくなる。マレーシアに資金を移して定期預金しておけば1年定期でも3.2%程度の金利を得られる。
まだマレーシアに銀行口座がなく、円からリンギットに換金できない状況であれば、リンギットと相関性の高い通貨、例えばシンガポールドル等を持つことでも変動リスクの回避になる。

2.ドルなど複数の通貨で運用する
ポートフォリオ上、リンギットの比重を増やしたくない場合、ドルなど複数の通貨建てで運用することでも為替リスクを軽減できる。

3.円安になることでメリットがでる対象に投資する
例えば輸出産業の業態で円安効果が出やすい会社の株式購入、FXによる為替取引など、円安時にメリットを得られるようしておけば年金減少を補てんする効果を得られる。

急激な円安だけではなく原油価格が大幅安になるなど、全体的に株や為替、商品市場の変動率が高まってきている。マレーシアでの安定した生活を継続するためにもどこまで為替リスクに対応できるのか現実を直視して、相場の変動に振り回されない自分なりのポートフォリオを作るべき時が来ているのかもしれない。 (投資はあくまで自己判断でお願いいたします。)

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Issued by 「マレーシア ソーシャルナビ 2014」

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