2014年8月に長年勤めてきた会社を退職し、住み慣れた日本の生活環境を離れて、異国の地マレーシアに移住することを決めた理由を記しておきたい。
子供たちが社会に出る時代を想定する
我が家には3人の子供たちがいるので日々の子育てに追われている状況だが、この子育ての出口が子供たちを社会に送り出すことだとすると、子供たちが成長して社会に出ていく時代、つまり15年~20年先の将来において、どのような能力が求められる時代になっているのか、どのような人物であれば社会の役に立つのかを想定しておく必要があると考えた。そして、想定した時代に向けて、親はどのような子育て環境を作ればよいのかを考えてみる。
急激な社会の変化を迎える日本
ますます変化が激しくなる時代のなかで将来を予測するのは非常に難しいが、1つ確実な未来を知ることができるのは人口動態だ。日本が大量の移民を受け入れるとは思えないので、これまでの傾向で推移していけば日本の総人口は急激に減少しながら高齢化社会がやってくる。この外部環境の変化にともなって、現存する多くのビジネスモデルや社会基盤の再構築が必要となり、それにともなって日本の産業および社会構造そのものが大きく変化せざるを得ない状況となる。
変化に柔軟に対応できる能力
おそらく2020年の東京オリンピック以降、そのような環境変化が顕著になり、それまで先送りされてきた問題も次々と顕在化、今までに誰も経験したことのないビジネス環境、社会環境が出現する。このような未知の環境では過去の知識や経験を当てはめて変化をとらえるのではなくて、新しいこと、新しい問題としてとらえて、柔軟に対応できる能力が重要となっているだろう。過去の経験に基づく意思決定はあまり役に立たなくなるのだから、世界中で若い経営者が過去にとらわれずに意思決定していることだろう。
子供のうちから多様な社会を体験させる
さて、このように子供たちが社会に出る時代を想定したうえで、急激な環境の変化に対応できる能力を身につけるためのアプローチはいくつもあると思うけれども、我が家では幼少期にマレーシアで生活体験をさせることを選んだ。マレーシアは多民族、多文化、多宗教、多言語と多食文化という多様性を持った国で、ここで生活するだけでも日本とは異なることを体験できる。このことが自ずと広い視野、従来と異なる視点、変化に対応できる能力を育てるのではないかと考えてのことだ。
外に出るからこそ日本の価値が見えてくる
日本から離れることで自然と日本とマレーシアでの生活を比較することになる。日本を離れて6か月ほど経ったときに8歳の息子と5歳の娘が口をそろえて「日本に帰りたい」と言い出した。どうして日本に帰りたいのかと聞くと、日本は「道路がきれい」「海もきれい」「スーパーで売っているものが腐っていない…」「歩道がある」「米が美味しい」。そうだね。日本で当たり前だと思っていたことが世界ではそうではないこと、そのような”違い”に気づくためにもマレーシアに来ているのだよ。
「会社を辞めて家族でマレーシアに移住した理由:仕事編」に続く
<もっと知りたい方におススメの本>
大前研一 日本の論点 2015~16
世界的な視点でいま取り上げるべき論点を知ることができる。冒頭の特別企画ではマレーシア 元首相マハティール氏の参謀を務めた大前研一氏が当時どうのように考えていたのかが分かり面白い。
Issued by 「マレーシア ソーシャルナビ 2015」