米国の量的緩和終了を受けて、ドルはマレーシア リンギットに対して上昇トレンドを描いている。このトレンドに原油価格の下落が拍車をかける形となり、今週、1ドル=3.5リンギットまで上昇し、ドルは約5年3か月ぶりに高値を更新した。米国の金融正常化のプロセスは長い時間をかけて徐々に進められていくはずなので、ドル高・リンギット安は長期的な為替トレンドとなるだろう。
強いドルと弱い円の狭間で
日本円の視点で見るとドル高、円安傾向が鮮明になっているが、リンギットを含めた3つの通貨の強さは円 < リンギ < ドルの関係。円安で異変、マレーシアでの年金生活 でも書いたように、マレーシアなど海外で生活する者にとっては、最も弱含みの円を持ち続けることがリスクになってきている。このようなトレンドの場合、円を持つよりも、リンギ。リンギを持つよりもドルを持つほうが賢明な選択といえる。
思い出される苦い過去
原油価格やロシアルーブルの急落はマレーシア政府と国民に1997年に発生したアジア通貨危機を彷彿させる。あのときはタイバーツの暴落を発端として、マレーシア リンギットの急落も引き起こし、マレーシア経済に甚大な影響を与えた。結局、IMFなどの国際世論を押し切って、1ドル = 3.8リンギットの固定相場制を採用することでようやく沈静化のめどがついたという苦い過去がある。2007年当時と比べると、マレーシアの外貨準備高は約6倍に増加しており、金融危機に対応する能力は格段に強化されている。だからといって安心できるものでもない。2013年時点でマレーシアの約4倍の外貨準備高をもっていたロシアがルーブル下落を止められない現実が目の前にあるからだ。
2015年4月が当面の正念場
自国の経済や通貨を健全に保つため、マレーシア政府は外貨準備高の強化だけではなく、根本的な財政の健全化を進めている。その1つが2015年4月に税率6%で導入される物品・サービス税(GST)だ。GSTの導入は、国家財政の石油収入への依存を減らすとともに、慢性的な財政赤字を解消していく意思表明であり、格付け会社の警告やヘッジファンドからの攻撃をかわす狙いもあるとみられる。
2015年4月といえば、米国の金融正常化のプロセスにて利上げが始まると予想される時期と重なる。原油安やルーブルの急落など、様々な思惑が交差する国際金融市場で、巨大な米国金融の方向転換を迎えるこの時期がマレーシア財政やリンギットの真価を問われる正念場となるだろう。(投資はあくまで自己判断でお願いいたします。)
Issued by 「マレーシア ソーシャルナビ 2014」