クアラルンプールの大型ショッピングセンターに行くと、必ずといっていいほどユニクロの店舗を目にする。マレーシアに初めてユニクロの店舗がオープンしたのが2011年。シンガポール進出から遅れること約2年の進出だったが、ついに今年、シンガポールの店舗数18店を抜いて、マレーシア国内で21店となっている。 まだまだマレーシア国内での都市開発は続いていくので、出店数はさらに増加していくことだろう。
そのユニクロの店舗でいつも思う疑問が、「なぜこの常夏のマレーシアで、冬物を販売しているのか?」ということ。 赤道付近にあるマレーシアは一年を通して、最高気温が34度ほどあるいわゆる常夏の国だ。普通に考えると年間を通じて、半袖シャツやTシャツ短パンなどのカジュアル衣料をメインで扱いそうなところだがユニクロは違う。
もちろん夏物も販売されているが、店舗を見るとあきらかに冬物がイチオシ商材のようにレイアウトされている。マフラーを付けていたり、ヒートテックの紹介があったり力の入れようなのだ。急拡大している各店舗で同じように冬物のレイアウトを優先しているということは、つまりマレーシアで冬物が売れているということを示している。先日、シンガポールに行った時も同様に冬物優先のレイアウトだった。マレーシアだけではなく、東南アジアで横展開されているのかもしれない。
常夏のマレーシアで誰が冬物を買っているのか?
まず考えられるのは、年々増加しているマレーシアの富裕層だ。2009年に約700万人だった富裕層は2015年には倍の1400万人を超え、2020年までに2000万人に達すると予測されている。富裕層は海外旅行にいく経済的な余裕があるので、寒冷な季節に中国や日本などに観光にいく旅行者も増えていくということになる。特に秋から冬、春にかけて、マレーシアでは体験できない紅葉狩り、雪遊び、お花見などは人気の観光目的となっている。この旅行には冬物の衣料がかかせない。
また、マレーシアの人口の約26%を構成する中国系の存在も見逃せない。マレーシア人の海外旅行先の人気ナンバー3はタイ、インドネシア、中国で、中国と香港を合わせると毎年140万人以上の旅行者が中国を訪れている。春節の時期などかなり防寒が必要な地域もあるだろうが、ユニクロの軽量で暖かいダウンコートなどは重宝することだろう。
その他、以下のような購買者が想定できる。
・オフィスやモール内では冷房が効いていて結構寒い。そのような室内にいることが多い人(特に女性のオフィスワーカー)
・マレーシア国内でキャメロンハイランドなど高冷地に行く機会がある人
・普段着なくてもいいから、ユニクロという新ブランドを買ってみたい人
・他国からの出稼ぎ労働者
人口 約3000万人のマレーシアで、ユニクロで衣料を購入できる消費者はまだ少数派であるが、購買力のある富裕層を中心にいまのうちにブランドを浸透させることができれば、将来にわたってこの国でユニクロで買い物をする消費者の増加につながることは間違いない。それにしてもマレーシアでの新規出店当初から冬物を中心に販売するというのは相当の度胸がなければ取れない戦略だ。
カジュアル衣料業界で競合関係のZARAやGAPの店舗ものぞいてみたところ、ユニクロほどではないが、少しずつ冬物が置かれている様子が見えた。競合が少しずつ冬物のポジションを狙ってきている。競合が追いついてくる前に、マレーシア国内に多店舗展開して「ユニクロ」ブランドの浸透を図り、それまでの間に冬物以外の次のヒット商品を作り上げていく。
マレーシアでの冬物販売と急速な店舗展開にはそのような背景があるように見えた。
Issued by 「マレーシア ソーシャルナビ 2014」
コメント
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コメントから、「マレーシアの富裕層が増加」⇒ 「海外旅行者の増加」 ⇒「冬物衣料の必要性」という見方がしっくりくるように思いました。
当ブログの「マレーシアからの訪日客が2年で倍増する理由」にも書きましたように、日本への旅行者も急増しています。このマレーシアでの冬物衣料マーケットは引き続き拡大するものと思います。