「インター校など選択肢が多いなか、日本人学校を選んでいただいてありがとうございます」 2014年8月、クアラルンプール日本人学校への転入生向け父兄説明会での校長先生のお言葉だ。この数年、日本人学校への転入生が増えていると聞いていたので、少し違和感を覚えた。
実際、日本人学校の生徒数の推移をみるとこの3年間では確かに増加している。しかし、過去をさかのぼるとクアラルンプール日本人学校の生徒数は1997年をピークに2011年まで一貫して下げ続けてきた。少子化の影響が大きいだろうか在留邦人数に対して日本人学校に通う生徒の割合は少しずつ減少している。
この減少傾向のなか、突如としてグラフに変化が現れる。2011年、マレーシア全体の在留邦人数が一気に2倍、クアラルンプールでは前年比120%増という急激な増加を記録した。これに対して、クアラルンプール日本人学校の生徒数(小学部)の増加数は前年比 12%増。同じく急増したMM2Hビザの取得者は定年退職後の方が多いと想定したとしても、2011年以降、小学生のいる家庭のマレーシア移住が加速したことは間違いない。しかし、全体の増加数に比べてクアラルンプール日本人学校の生徒数は増えなかった。校長先生のお言葉の背景にはこのことがあったのかもしれない。生徒はどこにいったのか?
次々と新設されるインターナショナルスクール
日本人学校以外には現地の公立小学校かインターナショナルスクールということになるが、現地の公立小学校はマレー語がネックになるので、日本人の生徒はほとんど選択しない。つまり、多くの日本人の小学生が留学生としてインターナショナルスクールを選択しているということだろう。2013年春に開校したジョホールバルのマルボロカレッジが多くのマスコミに取り上げられて有名になったが、それ以外にもマレーシアでは次々にインターナショナルスクールが新設されている。このインターナショナルスクールには外国人だけではなく、英語教育に力を入れたいマレーシア人の子女も多く希望している。ブミプトラ政策を推進するナジブ政権の教育改革によって、公立小学校ではマレー語による授業を増やしているが、そのことが逆にインターナショナルスクールの人気をあおっているという話もある。
インター校に編入するメリット・デメリット
インターナショナルスクールと一言でいっても、運営母体から各学校のカリキュラムなど千差万別ではあるが、編入の全体像をざっくりまとめた。日本人学校からインターナショナルスクールに編入する時期によってメリットとデメリットがあると思われる。
① 日本人幼稚園からローカル幼稚園
マレーシアの都市部には多くの私立幼稚園(Pre-School / Kindergarten)が運営されていて選択肢はかなり多い。英語、中国語、マレー語、タミル語など多言語環境で早期教育を実施、設備も充実している幼稚園が多い。幼児期の子供は環境に馴染むのは早く、比較的早く外国語を話せるようになる。日本人学校に入学する場合は、日本語の環境にならせるため年長クラスまでに日本人幼稚園に転校させるケースもみられる。
② 日本人学校からインター校
ある程度、日本語を第一言語として習得するため高学年までは小学校に通い、途中でインター校に編入させるケース。インター校に編入させるためには塾や家庭教師などを利用して英語での授業についていくための学習が欠かせない。また、インター校に編入後は家庭や塾で日本語の勉強を継続していくことも必要となるだろう。
③ 日本人中学校からインター校
中学生ともなれば日本語が第一言語として確立している。日本語を使って考え、英語を論理的に学ぶことができる。その反面、入学時に必要となる英語のレベルは小学校での入学に比べると高くなる。②と同様に塾や家庭教師などを利用して英語での授業についていくための学習が欠かせない。
④ 日本人中学校から日本の高校
マレーシアでは日本人学校の高校過程はないので、日本の高校を受験して入学するか、シンガポールにある早稲田校など日系の高校を目指すことになる。
⑤ 日本人中学校からインター校(高校過程)
日本人学校で中学校を卒業した場合、英語力が不足して通常のコースに直接編入するのは難しい。インター校に編入した場合、英語補習クラスや英語集中クラスという特別なコースを利用して語学力を補うことが必要となる。
インターナショナルスクールのカリキュラム分類
実際にインター校への編入を考えるとなると、クアラルンプールとその近郊だけでも40校ほどのインター校があり、しかも今後、新設されるインター校も選択肢に入ってくる。また各インター校が採用しているカリキュラムによってケンブリッジ系、国際バカロレア系、アメリカ系、オーストラリア系、カナダ系などに分かれるので、それぞれのカリキュラムを比較することや学校方針、授業内容、難易度、通学のしやすさ、授業料、学校設備や環境など多方面で比較検討することが必要となる。
マレーシア留学でインター校の良さとは
1.文化の多様性
なんといってもマレーシアは多民族国家なので、欧米の生徒以外にもマレー系、中国系、インド系、韓国、タイ、インドネシアなど様々な文化や価値観をもつ生徒と一緒に学ぶことができる。マレーシアはそのような各民族の文化を大切にすることで国家として1つにまとまり成長してきた。英国や米国と比べても、文化の多様性がある環境での学校生活は多感な時期を過ごす子供たちの大きな糧になることだろう。
2.学費と生活費が安い
マレーシアにあるインター校の学費は年間30万円くらいから高いところでは年間の費用は250万円ほどとかなり学費の幅があるが、高級住宅街でネイティブの講師が多い学校を除けば年間100万円以下の費用のインター校が多い。日本のインターナショナルスクールでは入学金は100万円、年間授業料は200万円くらいかかることを考えるとマレーシアのインター校の学費は安いといえる。他の国と比べてマレーシアでの生活費や習い事が安いのも見逃せない点だ。
3.多様な卒業後の進路
上記に見てきたようにマレーシアには世界各地のカリキュラムを運営するインター校がある。カリキュラムの種類にかかわらず、そこで取得した大学進学資格は世界中で通用する入学資格となる。また日本に帰国するとしても日本の大学に帰国子女枠で入学することも可能なので、通常の試験を受けるよりも入学しやすいケースもある。
最後に・・・
今回はインター校への編入(留学)が増えている背景からインター校への編入時期とそのメリットなどをテーマに記載したが、もちろんそのまま日本人学校に通い続けるというのも立派な選択肢の1つだ。海外の日本人学校に派遣される教員は難しい試験に合格しなければならず、そのため熱心で優秀な先生ばかりだということを最後に付け加えておく。今後も増え続けるインター校の情報を追いかけながら定期的にアップデートしていきたい。
■ マレーシア留学 インターナショナルスクール情報
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■ マレーシア留学 インターナショナルスクールリスト
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